ばね指の自主トレーニング
A1 pulleyとは
A1 pully(靭帯性腱鞘)は、指を曲げるための「滑車」のような役割を果たしています。
腱がこの部分を通ることで、指を効率よく動かすことができます。
日本手外科学会 手外科シリーズ パンフレットから引用
しかし、使いすぎや炎症が原因でこの部分が腫れると、腱が引っかかり、指がスムーズに動かなくなることがあります。この状態は「ばね指」と呼ばれ、治療が必要になることがあります。
日本手外科学会 手外科シリーズ パンフレットから引用
ばね指の詳しい説明は こちら をご参照ください。
母指に対するA1 pulley ストレッチ
1. 手首の位置を整えます。
→手首を軽く反らせた状態で、安定した場所に手を置きます。
2. 親指の形を作ります。
→親指の付け根を曲げ、中間の関節を少し曲げて、親指の先を反対の手の指先でそらすようにします。
3. 指先で押し合うようにします。
→親指の先と反対の親指指の先で軽く押し合います。押す強さは無理せず、少し抵抗を感じる程度で十分です。
4. 30秒間キープします。
→この押し合う状態を30秒間続けます。力を入れすぎず、手全体をリラックスさせたまま行います。
5. 1日10回以上行います。
→無理のない範囲で、1日10回以上繰り返します。
示指~小指に対するA1 pulley ストレッチ
1. 手の位置を整えます
→手首を少し反らせた状態(軽く上に曲げた感じ)にして、机やひざの上など、安定した場所に置きます。
2. 指を曲げます
→指の付け根と真ん中の関節を曲げ、指先の関節は伸ばしたままにします。これで「軽く握ったような形」になります。
3. ブロックを持ちます。
→小さな木片や他の握りやすいもの(例:消しゴムや柔らかいボールなど)を親指と指先で軽くつまみます。
4. 30秒間キープします。
→握った状態を30秒間保ちます。この間、リラックスして呼吸を続けてください。
5.繰り返し練習
→この動作を1日に10回以上、無理のない範囲で行います。
上記のストレッチに合わせて、 手指のストレッチを行うことで、手術や注射を必要とする割合が減少したと千葉や岩倉らは報告しています。
また、大石らによる研究でも、A1 pullyに対するストレッチ法が、ステロイド注射後に再発したばね指の症状に対し、即時的な疼痛および引っかかり(snapping)の軽減をもたらし、手術回避につながる可能性が示唆されています。
参考文献
- 千葉有希子、阿部圭宏、徳永進:ストレッチは弾発指に対する保存治療として有効である
日本手外科学会雑誌,31(6):935–940,2015. - 岩倉菜穂子、千葉有希子、徳永進:ばね指に対するストレッチ「とくなが法」の治療効果
MB Med Riha,244:76–82,2020. - 大石崇人、大村威夫、黒木陽介、松山幸弘:ステロイド注射後も症状遷延するばね指症状を、とくなが法に工夫を加え、ストレッチで改善させる
日本手外科学会雑誌,41(6):790–793,2025.



