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アキレス腱の痛み:最新の動注療法が著効しました!

[2024.01.28]

初めまして、理学療法士の白山祐介です。第2回目のブログ記事を担当させてもらいます。

日常よく見られて、治療が難しい「アキレス腱付着部症」に対して、最新の治療法が著効したので、アキレス腱の障害を概説しながら報告します。

 

アキレス腱付着部症は、アキレス腱とかかとの骨の付着部周辺に痛みが生じます。(図1)特に上向きに足首を曲げたときに強い痛みが生じます。進行すると、安静時にも痛みが続くようになります。

 

図1)

 

アキレス腱とかかとの骨の付着部に強い引っ 張る力が加わります。また、その少し上では腱と骨が接しているため、互いに圧迫力を受けています。(図2)これらの力が繰り返し加わることで、付着部に変性(図3)が生じ、痛みを起こします。

 

 

図2)

 

図3)

図1,2,3 日本足の外科学会 アキレス腱付着部症パンフレット より引用


発症のきっかけは、かかとの骨や足の形の異常、仕事やスポーツなどによる使いすぎ、筋肉の柔軟性低下、不適切な靴などです。

一般的な治療としては、安静と運動制限を行い、ストレッチなどのリハビリテーションやインソール(靴の中敷き)の装着を行います。他に痛みが非常に強い場合、ステロイド剤の局所注射も検討されますが、腱の強度低下やアキレス腱断裂のリスクがあるため当院では施行しておりません。

当院では、腱を弱くさせることなく痛みに対しての治療ができる「動注療法が可能であり検討することになりました。

動注療法(治療)とは、動脈に薬剤を注射することで、炎症部分に発生している「異常な血管:モヤモヤ血管」を減らして疼痛の改善を図る新しい治療方法です。急性期の痛みではなく、慢性的に疼痛や腫脹がある場合に効果的です。

へバーデン結節や外反母趾などの変形性関節症や、アキレス腱付着部症や足底腱膜炎などの腱付着部炎では、慢性炎症に伴う病的新生血管(モヤモヤ血管)(図4)がある事が知られています。¹) ²⁾ ³⁾

 


図4)アキレス腱付着部に生じた病的新生血管
奥野祐次.アキレス腱炎|慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A
https://okuno-y-clinic.com/itami_qa/achilles.html より引用

 

動注治療はオクノクリニックの奥野先生が2014年に開発された治療であり、当院はオクノクリニックとライセンス契約を結んで治療を行っています。

オクノクリニック:https://okuno-y-clinic.com/

国内ではすでに1万人以上の方がこの治療を受けており、ほとんど副作用なく、安全で効果的な治療です。

 

(今回の症例)

趣味のフットサル中に左アキレス腱に痛みが生じ、歩行時や日常生活にも支障が生じるようになったため当院を受診しました。

身体診察では、アキレス腱付着部に押すと痛みが認められ、体重をかたけ時にも痛みを認めました。レントゲンではアキレス腱と骨の付着部に骨の変性を認め、エコーではアキレス腱の付着部に「モヤモヤ血管」の影響が疑われる異常な血流反応を認めました。

受診時の身体所見として、アキレス腱が付着しているふくらはぎの筋肉(以下 : 下腿三頭筋)の柔軟性低下、その結果として背屈角度(つま先を上げる角度)の制限を認めました。また足部の土踏まず(アーチ)が極度に低下している扁平足の状態でした。 


現代人の生活の中で座り過ぎる時間が長いと、下腿三頭筋の柔軟性が低下が生じます。勿論、筋力トレーニングやランニングなど足の酷使でも、過緊張の状態になり下腿三頭筋の柔軟性は低下します。この下腿三頭筋の柔軟性が低下は、下腿三頭筋が付着するアキレス腱への伸張ストレス(引っ張られる力)が増加して、結果的にアキレス腱の傷害が生じるのです。(図5)

 

図5) 下腿三頭筋の柔軟性低下によるアキレス腱への伸長ストレス増加のイメージ
スマートフォンアプリ 解剖学-3Dアトラス を用いて作成

 

この悪循環を改善するためにリハビリテーションの一つとして、下腿三頭筋のストレッチを行いました。

いくつかの定型的なリハビリテーション手技により痛みは徐々に軽減しましたが、起床時や長時間負荷がかかったときの痛みは残存していましたので、予定していた「動注療法」を行うことになりました。

「動注療法」から4日後の時点で痛みは大幅に改善していました。

痛みの改善と同時に、動注療法以前では行うことのできなかった、ジャンプ動作等の負荷の高い運動を行う事ができるようになりました。

「動注療法」施行して1ヶ月後には、フットサルに復帰できるようになりました。
以後、症状の再発は認めておりません。治療経過を以下に示します。

 

 

アキレス腱周囲の痛みが軽快せずにお悩みの方は多くいらっしゃいます。リハビリテーションだけでなく、「インソール(中敷き)※」「動注療法」などを合わせて治療していますので、諦めずに当院へ是非ご相談ください。

 

※膝、足など歩行の重心バランスの調整に重要な治療的役割を果たすインソール(中敷き)の記事、次回作成します。

 

参考文献

1)Transcatheter arterial embolization using imipenem/cilastatin sodium for tendinopathy and enthesopathy refractory to nonsurgical management

Yuji Okuno 1, Noboru Matsumura, Sota Oguro

2)奥野祐次.アキレス腱炎|慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A

https://okuno-y-clinic.com/itami_qa/achilles.html  (参照2023-12-18)

3)奥野祐次.”運動器カテーテル治療の世界で最初の報告”

https://okuno-y-clinic.com/academic/2281 (参照2023-12-18)

 

 

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