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頑固な肩こり:サイレントマニュピレーションについて

[2023.12.15]

 

初めまして、理学療法士の保坂幸太です。

今回、肩関節の動きが著しく悪い状態(拘縮肩)から、当院での治療により肩関節の動く範囲(可動域)が劇的に改善し治療を終了することができた症例を報告検討してみます。


四十代女性、左肩が徐々に挙がらなくなり、何もしていない安静時にも強い痛みが生じ、眠っている間に痛みで起きてしまうようにもなり、日常生活が非常に困難なレベルの肩の痛みを主訴に当院を受診されました。

肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)の診断で、標準的な治療方法として薬物治療、運動器リハビリテーション、関節腔内注射が計画され、当院では医師によるサイレントマニュピレーション(徒手授動術)が可能のため適応の有無を検討していくことになりました。

※サイレントマニュピレーション(徒手授動術、以下SMと略します)とは?

肩関節の炎症で硬くなってしまった関節包を、神経ブロックによる麻酔で痛みを無くした後、徒手的に関節包を愛護的に剥がす操作を行って可動域を広げる方法です。(※日本で開発されました)

 

図1 拘縮肩(整形外科学会の肩関節周囲炎のパンフレットより引用 

 

薬物治療、運動器リハビリテーション、関節腔内注射により肩関節の可動域は徐々に拡大していきましたが、予想通り2ヶ月ほどで可動域の改善が停滞してしまいました。

 

関節腔内注射や運動器リハビリテーションによって前方から上方の関節包の硬い状態は大幅に改善されてきていると判断し、下方から後方の関節包の「部分的な」SMが計画されました。 

腋窩神経周囲を局所麻酔薬で神経ブロック後、周囲の結合組織の剥離を行う注射ハイドロリリースと言うも同時に実施し速やかに理学療法士によって主に後方から下方にある関節包を徒手的に剥離する操作を試みました。しかし組織の癒着は術前の予想以上であり、残念ながら期待していたほどの成果は得られませんでした。 
 

後日関節包を全周的に剥がす「オリジナル原法」のSMが医師により実施され肩関節の可動域が大幅に改善し、懸念される再拘縮もなく治療を終えることができました。 

 

SM直後は一時的に可動域は下がりますが早期にリハビリテーションを行うことで多くの症例で改善することが確認されていて、当院では徹底的な術後指導もあり現在まで再拘縮の症例は認めておりません。(医師の他院含めた全経験症例 50例) 

 

拘縮肩を呈した重症の肩関節周囲炎に対して、漠然と行われてきた従来の標準的な保存療法や入院手術よりSMは効果的であることが近年多数報告され急速に普及してきています1) 医師と理学療法士がタッグを組み、より侵襲の低い部分的なSMも、上手く活用できたという最新の報告もありますので2)3) 今後は「部分的な」SMのリハビリテーションの精度をより一層上げていくよう努力していきたいと思っています。 

 

図2 肩関節(患側)の可動域の治療経過を示します。 

 

 

 

 

 


サイレントマニュピレーション後の可動域の改善動画①

https://youtube.com/shorts/k7KmY6y_CLc?feature=share

 

サイレントマニュピレーション後の可動域の改善動画②

https://youtube.com/shorts/d8Ob5DjKVAQ?feature=share

 

 

参考文献 

1) 古賀唯礼,他.拘縮肩に対するサイレントマニピュレーションの臨床成績.整形外科と災害外科.2019,68(3) ,540-543. 

2) 鈴木茂樹,他.エコーガイド下Fasciaリリースの治療効果― Fasciaの痛みの原因と多職種連携の必要性について―.理学療法―臨床・研究・教育.2019,26,3-7. 

3) Mulvaney,Sean,W.Ultrasound-Guided Percutaneous Neuroplasty of the Lateral Femoral Cutaneous Nerve for the Treatment of Meralgia Paresthetica a Case Report and Description of a New Ultrasound-Guided Technique.Current Sports Medicine Reports.2011,10(2) ,99-104. 

 

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