肩のリハビリテーション:自主トレーニング (初級編)ステップアップ版
リハビリテーション重視の治療方針
肩関節周囲炎(四、五十肩)のリハビリテーション治療において、1)肩関節の動きを改善するための運動療法をすること、2)日常生活での肩関節に負担のかかる動作を避けることが非常に大切になります。
肩の関節は、大きく分けて「肩甲上腕関節」と「肩甲胸郭関節」の2つがあります。肩関節の動きを理解することは、リハビリテーションの効果を高めるために重要です。以下に、それぞれの関節について説明します。
① 肩甲上腕関節
ヒューマン・アナトミー・アトラスより引用
肩甲上腕関節とは、肩甲骨の関節窩(かんせつか)と上腕骨頭が接する部分で、肩の動きを大きく支える関節です。肩甲上腕関節の大きな可動性を支えるためには肩腱板筋の働きが重要です。肩腱板筋とは、肩甲骨と上腕骨をつなぐ4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)の集合体です。
ヒューマン・アナトミー・アトラスより引用
肩腱板筋は、上腕骨頭を肩甲骨の関節窩に引き寄せることで、肩関節の安定性を維持する役割を担っています。これらを求心性と言い、中級編で肩腱板筋のトレーニングの紹介の際に詳しく解説します。
ヒューマン・アナトミー・アトラスより引用
② 肩甲胸郭関節
ヒューマン・アナトミー・アトラスより引用
肩甲胸郭関節は、肩甲骨と胸郭(肋骨と胸椎)によって構成される関節です。肩甲胸郭関節の機能としては、肩甲骨が動くことで、肩関節の動きをサポートします。
実際に3つの自主トレーニングを紹介します。
★肩の可動域訓練(コッドマン体操)
コッドマン体操は、肩関節を大きく円を描くように動かす体操で、肩関節周囲の筋肉を柔軟にし、血行を促進する効果があります。
この体操は肩関節の可動域を広げ、肩周りの筋肉の血流を改善させるので、痛みの軽減に繋がります。
コッドマン体操

- 足を肩幅程度に開きます
- 肩の力を抜き、痛い方の腕を前に垂らしながら、ゆっくりおじぎします
- 身体を前後に揺らし、腕を振り子のように動かします(30秒)
- これを10回繰り返します
コッドマン体操が肩甲上腕関節・肩甲胸郭関節に及ぼす作用
1. 肩甲上腕関節への作用
・ 重力を利用して関節の圧迫を軽減
→ 肩の筋力を使わず、上腕骨頭が関節窩内で自然に動く(モビライゼーション効果)
2. 肩甲胸郭関節への作用
・ 肩甲骨のリズミカルな動きを促進(肩甲上腕リズムの回復 ※肩甲上腕リズムの詳細については、自主トレーニング中期で説明)
→ 肩甲骨が自然に上下・前後・回旋することで、肩の動きがスムーズになる
・肩甲骨周囲の筋肉の緊張を緩和
・肩甲骨の可動性を高め、肩関節全体の動きを改善
★肩甲骨ストレッチ
肩甲骨は、肩関節の動きを支える重要な骨です。肩甲骨がスムーズに動かないと、肩関節の動きが制限され、痛みが出やすくなります。肩甲骨ストレッチは、肩甲上腕関節の可動域を広げ、安定性を高めると同時に、肩甲胸郭関節の可動性を向上させ、肩甲骨周りの筋肉を柔軟にするといった作用があります。
- 姿勢を整えて座る。 両肩に小指・薬指を乗せる。
- 指先が肩から離れないように気をつけながら、
- 肘で大きな円を前から後ろへ描くようにして肩を後ろに回す。(10回)
★胸椎伸展ストレッチ
背中が丸くなる(胸椎屈曲:猫背)と、肩甲骨が前に傾き(前傾)外側に広がります(外転)(いわゆる巻き肩)。その結果、肩関節の位置ずれることにより、肩甲骨と上腕骨の「協調リズム(※中級編で解説します)」が崩れて、可動域が制限されます。(→腕が上がりにくくなります)
ヒューマン・アナトミー・アトラスより引用
ヒューマン・アナトミー・アトラスより引用
猫背姿勢とは、胸椎の屈曲によって肩甲骨が前傾・外転した不良姿勢のことを指します。デスクワーク、うなだれ姿勢が長時間続くと胸椎の動きが硬くなり、肩甲胸郭関節の可動性が制限され猫背(巻き肩)になりやすくなります。
猫背による肩甲骨の不適切なポジションを改善するには、胸椎を伸展させるストレッチが効果的です。これにより肩甲骨が自然に後傾・内転しやすくなり、巻き肩も改善され「良い姿勢」を保ちやすくなります。
①座りながらできる「胸椎伸展ストレッチ」を2つ紹介します。
- いすに浅めに座り、脚を腰幅に開く。
- 肘を膝の上に置き、おへそをのぞき込むように背中を丸くする(息を吐く)。
- 肘を膝から離さずに、胸を前へ突き出すように背中を反る(息を吸う)。
②座りながらできる「胸椎伸展ストレッチ」
こちらは頚椎のコンディショニングにも、とても重要になります。デスクワークの方は、是非実践してみてください。
頚椎は両手で抱えて、腰椎は反らさないで、両肘を天井につきあげると胸椎が伸びます。
リハビリテーションの自主トレーニングメニュー 肩関節障害 中級

