変形性膝関節症
変形性膝関節症とは
男女比は1:4で女性に多くみられ、高齢者になるほど罹患率は高くなります。主な症状は膝の痛みと水がたまることです。
初期では立ち上がり、歩きはじめなど動作の開始時のみに痛み、休めば痛みがとれますが、正座や階段の昇降が困難となり(中期)、末期になると、安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、膝がピンと伸びず歩行が困難になります。
当院では症状の緩和や機能の回復を目指し、患者さん一人ひとりに適した治療を提供します。
日本整形外科学会 変形性膝関節症 ホームページ、パンフレットより引用
原因と病態
原因は関節軟骨の老化によることが多く、肥満や素因(遺伝子)も関与しています。また骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷、化膿性関節炎などの感染の後遺症として発症することがあります。
加齢によるものでは、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、使い過ぎによりすり減り、関節が変形します。
日本整形外科学会 変形性膝関節症 ホームページより引用
診断
問診や診察、時に触診で膝内側の圧痛の有無、関節の動きの範囲、腫れやO脚変形などの有無を調べ、X線(レントゲン)検査で診断します。必要によりMRI検査などをします。
日本整形外科学会 変形性膝関節症 ホームページより引用
当院の治療方針
当院では、患者さんの状態や生活スタイルに合わせて、保険診療と**自費診療(自由診療)**を組み合わせた治療を行っています。
保険診療:基本的な治療とリハビリテーション
1. エコーガイド下の施術
エコーを用いて患部を正確に確認し、以下の治療を行います。
- 神経ブロック:膝周囲の神経をターゲットに痛みを緩和します。
- ハイドロリリース:筋膜や周囲組織の癒着を剥がし、関節の可動域を改善します。
変形性膝関節症診療ガイドライン2023(以下ガイドライン2023)
Clinical Question(以下CQ)13 変形性膝関節症にヒアルロン酸関節内注射は有用か
ヒアルロン酸関節内注射は、変形性膝関節症に対して有用である。
推奨度2・合意率93%・エビデンスの強さB
CQ14 変形性膝関節症にステロイド関節内注射は有用か
変形性膝関節症に対するステロイド関節内注射は有用であるが短期的効果のみであり、頻回の投与や長期間の使用は避けるべきである。
推奨度2・合意率79%・エビデンスの強さC
2. リハビリテーション
膝関節の機能改善を目指し、理学療法士が個別のプログラムを提供します。
CQ2 変形性膝関節症に運動療法は有用か
運動療法は、鎮痛、身体機能改善効果日常生活機能改善効果を認め有用である。
推奨度1・合意率82%・エビデンスの強さC
太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える方法1
①椅子に腰かける
②片方の脚を水平に伸はす
③ 5~10秒そのままでいる(息は止めない)
④元に戻す
日本整形外科学会 変形性ひざ関節症の運動療法から引用
太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える方法2
①脚を伸ばして座る
②ひさの下においたタオルや枕を押す
③5~10秒そのままでいる(息は止めない)
④力を抜く
日本整形外科学会 変形性ひざ関節症の運動療法から引用
3. 膝のオーダーメイド装具(医療補助あり)
膝の安定性を高め、痛みを軽減するために、患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイド装具を作製します。医療補助が適用されるため、経済的負担を軽減しながら治療をサポートします。
ガイドライン2023
CQ5 変形性膝関節症に装具療法(歩行補助具を含む)は有用か
変形性膝関節症に対する膝装具、外側楔状足底挿板を用いた装具療法は鎮痛および機能改善に関して、その有用性は弱く推奨される。
推奨度2・合意率91%・エビデンスの強さB
4.薬物療法
ガイドライン2023
CQ7 変形性膝関節症にアセトアミノフェンは有用か
変形性膝関節症に対するアセトアミノフェンの有用性は一部限定的であるが認められるため、処方することを提案する。
推奨度2・合意率80%・エビデンスの強さB
CQ8 変形性膝関節症に NSAIDs内服は有用か
NSAIDs内服は、短期的な鎮痛および機能改善効果を認め有用であるが、長期間の使用は合併症に留意する必要がある。
推奨度2・合意率86%・エビデンスの強さB
CQ9 変形性膝関節症にNSAlDs外用は有用か
NSAlDs外用は、変形性膝関節症に対して鎮痛、機能改善効果があり、重篤な合併症もなく有用である。
推奨度2・合意率84%・エビデンスの強さB
5.手術療法
ガイドライン20203
Background Question(以下BQ) 11 変形性膝関節症に膝周囲骨切り術は有用か
膝周囲骨切り術には複数の術式があり評価が困難であるが最も一般的な高位脛骨骨切り術 (hightibial osteotomy : HTO) は術後の疼痛、関節可動域、臨床成績などが術前に比して有意に改善する。膝周囲骨切り術は身体活動性が高い、あるいは比較的年齢の若い変形性膝関節症例に特に有用と考えられる。
BQ12 変形性膝関節症に人工膝関節内(外)側置換術・膝単顆置換術は有用か
人工膝関節単顆置換術 (UKA) は、病変が内側あるいは外側大腿脛骨関節に限局し、かつ前十字靱帯 (ACL) 機能に問題ない膝OA症例には、疼痛の軽減、ADLの改善に有効で、QOLの向上にも有用である。
BQ13 変形性膝関節症に人工膝関節全置換術は有用か
人工膝関節全置換術 (TKA) は、高齢者の内側および外側の進行した変形性膝関節症症例には疼痛の軽減、ADLの改善に有効で、QOLの向上にも有用である。
保険診療の特徴
- 健康保険適用により経済的負担が軽減。
自費診療:先進的な治療オプション
再生医療の一つとして、患者さん自身の血液を使用し、関節の修復を促進する治療法です。
- 期待できる効果:軟骨修復、炎症の軽減、痛みの軽減。
- 施術の流れ:採血 → 血液の加工 → PRPの注射。
- 対象:保存療法では改善が見られない初期から中期の膝関節症に適しています。
2. 動注療法
動脈にカテーテルを挿入し、膝関節の「もやもや血管」を閉塞させる治療法です。
- 特徴:痛みの原因と考えられている「もやもや血管」への血液供給を断つことで、効果的に炎症や痛みを軽減します。
- 対象:従来の治療法で効果が十分に得られない中等度から重症の膝関節症に適しています。
自費診療の特徴
- 保険診療では対応が難しい高度な治療が可能です。
- 症状の早期改善や長期的な効果を希望する患者さんに最適です。
治療選択肢の比較
項目 | 保険診療 | 自費診療 |
---|---|---|
治療内容 | ヒアルロン酸注入、神経ブロック、ハイドロリリース、リハビリ、オーダーメイド装具 | PRP療法、動注療法 |
対象 | 軽症から中等度 | 中等度から重症、早期改善希望者 |
期待される効果 | 痛みの軽減、関節機能の維持 | 軟骨修復、炎症抑制、迅速な痛みの軽減 |
費用負担 | 健康保険適用で経済的 | 自費診療で費用が発生 |
治療頻度 | 継続的な治療が必要 | 少ない回数で効果が期待できる |
変形性膝関節症の予後
ガイドライン2023
BQ1
変形性膝関節症の自然経過はどのようなものか
日本においては地域住民を対象に21年の長期追跡を実施した松代膝検診の結果から、61%に新たに膝OAの発生が認められたとの報告がある。また、3年と短期の追跡ではあるが地域住民コホ ートROAD studyの結果から新たに膝OAの発生が1割にみられ、2割が悪化したとの報告がある。
変形性膝関節症でお悩みの方へ
「膝の痛みがひどい」「歩行や運動が制限されている」といった症状でお困りの方は、ぜひ当院にご相談ください。保険診療と自費診療を組み合わせた総合的な治療で、快適な日常生活をサポートします。